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日本応用糖質科学会2026年度大会で寒天オリゴ糖・寒天の構造に関する研究成果を発表
伊那食品工業(株)は、2026年9月2日(水)~4日(金)に新潟大学で開催された 日本応用糖質科学会 2026年度大会(第75回)において、藤田医科大学、大阪公立大学をはじめとする研究機関との共同研究成果として、寒天オリゴ糖の腸内環境への作用に関する研究1題と、寒天の構造・物性に関する研究2題を発表しました。
当社では、寒天を食品素材として利用するだけでなく、その構造や物性の成り立ちを分子レベルから明らかにするとともに、寒天から得られるオリゴ糖の新たな生理機能について研究を進めています。
今回の発表では、「寒天から生まれる健康価値」と「寒天そのものの構造を理解する研究」の両面から、最新の研究成果を報告しました。
寒天オリゴ糖と腸内環境に関する研究
寒天オリゴ糖を利用する腸内細菌の働きを探る
藤田医科大学と伊那食品工業株式会社の研究グループでは、寒天由来のアガロオリゴ糖(寒天オリゴ糖、Agaro-oligosaccharides:AOS)が腸内環境に及ぼす影響について研究を進めています。
これまでに、健常な日本人成人を対象として、寒天オリゴ糖を1日200 mg、4週間摂取する探索的な試験を実施し、腸内細菌叢の一部に変化が認められることを報告しています。
今回の学会発表では、さらに腸内細菌が寒天由来成分を利用する際に関わる遺伝子に着目して解析しました。
その結果、寒天オリゴ糖の摂取後に、寒天を利用する能力を持つ腸内細菌や、その利用に関連する遺伝子量が増加することが確認されました。
これらの結果は、寒天オリゴ糖と腸内細菌との関係を理解するうえで、新たな手掛かりになると考えられます。
学会発表演題
「健常成人における寒天オリゴ糖摂取が腸内細菌の寒天利用関連遺伝子に及ぼす影響」
寒天の構造とゲル物性に関する研究
寒天が固まる仕組みを分子レベルから解明
寒天は、加熱すると溶け、冷却するとゲルを形成します。
しかし、寒天の主成分であるアガロース分子が、温度変化に伴ってどのように集まり、ゲルを形成するのかについては、まだ十分に解明されていません。
今回の研究では、小角X線散乱(SAXS)と分子動力学(MD)シミュレーションを組み合わせ、アガロースの温度変化に伴う構造変化を解析しました。
その結果、アガロース分子が二重らせんを形成し、それらがさらに集合することによって、寒天特有の三次元的なゲルネットワークが形成される過程を分子・ナノスケールから捉えました。
学会発表演題
「SAXSおよびMDシミュレーションによるアガロースの温度誘起ゲル-ゾル転移機構の解明」
原料海藻の違いと寒天の性質との関係を解析
寒天は、主にテングサ類やオゴノリ類などの紅藻から作られます。
同じ「寒天」であっても、原料となる海藻の種類によって、ゲル化温度や融解温度、食感などの性質が異なります。
本研究では、テングサ類およびオゴノリ類から得られた寒天について、NMR、SAXS、熱分析、動的粘弾性測定などを用い、分子構造からゲル構造までを総合的に解析しました。
その結果、原料海藻による寒天の性質の違いには、分子の化学構造だけでなく、アガロースの二重らせんがどのように集合してゲルネットワークを形成するかというナノスケールの構造が関係していることが示唆されました。
学会発表演題
「Gelidium spp.およびGracilaria spp.由来寒天の構造解析」
用語解説
- アガロオリゴ糖(AOS)
寒天を分解して得られるオリゴ糖の一種です。寒天を構成する糖が数個つながった構造を持ちます。 - 腸内細菌叢
腸内に生息する多種多様な細菌の集まりのことです。食事や生活習慣などの影響を受けながら、腸内で複雑な生態系を形成しています。 - アガロース
寒天の主成分の一つで、加熱すると水に溶け、冷却するとゲルを形成する性質を持つ多糖類です。 - 小角X線散乱(SAXS)
試料にX線を当て、その散乱の仕方を調べることで、数ナノメートル程度の微細な構造を解析する方法です。 - 分子動力学(MD)シミュレーション
コンピューター上で原子や分子の動きを計算し、分子がどのような構造をとり、どのように変化するかを調べる解析方法です。 - NMR(核磁気共鳴)
磁場中で原子核が示す性質を利用して、分子の化学構造を解析する方法です。
動的粘弾性測定試料に小さな変形を繰り返し与え、その応答を測ることで、ゲルの硬さや弾性などの物性を評価する方法です。
